さよなら、ギャシュリークラム

遺書を書かされています

観劇感想 7月期

 noteに書いてみたもののnoteに書く意味もないなあと思ったのでここに書くことにします。

 

劇団名 遠吠え
 公演名 遠吠え、のコマーシャル
 作・演出 木村みちる(遠吠え)
 日時 2018年7月14日 (土) 15:00~16:00
 場所 SCOOL
 〒181-0013 東京都三鷹市 下連雀3-33-6 三京ユニオンビル5F

 遠吠えの代表であり、作・演出をつとめる木村が、
「書きかけの台本が沢山あるんだけど、どれを上演しようかしら。」と考え込んだ結果、
「観に来てくれた人たちに決めてもらったらいいのでは!」と考え決まった企画公演です。
 4演目とも最初の15分だけを上演し、15分経つと強制的に暗転、次の演目に移るというスタイルです。
ご来場頂いた皆様に3票お渡しし、終演後に「これを観たい!」と思った作品に投票していただきます。1作品に全票投票もよし、投票しないことも可能なので、純粋に「観たい!」と思った作品をお選び頂けるシステムとなっています。

 前述の通り、面白い目論見であるなと思った。「遠吠え」の演劇は3月に観た「天国と地獄」が最高に面白かったので、次回公演もマストだな、と決めていたのだ。
 だが公演内容を確認して不安があった。そしてその不安は、ある意味では的中してしまったのだ。
 以下、各演目の感想。

『コントロール・アン・ア・アン・アン・コントロール』(上演予定時期:2018年初冬)
 下町の小さな工場、男たちは来る日も来る日も金属をプレスしている。隕石でも降ってこない限り変わらないだろうと思っていた日常は、とっくの昔に手に負えなくなっていた。
 遠吠えには珍しく、男子多めでお送りします。
出演者:竹内蓮(劇団スポーツ)、二宮清隆(劇団天然ポリエステル)、鈴木茉唯

 結論から言うと、僕はこれに3票を投じた。理由の一つとして挙げたいのは、圧倒的な未完成感。この後の展開が気になる……とギリギリ思わせないタイミングで15分経ってしまう。工場の休憩所内で淡々と進む話、何やら事件が起こるわけでもなく、ただ従業員同士のいざこざ、にも足らない程度の小競り合い、でも水面下で着々と何かが始まっている……ような気はする。きっと事件は起こっているのだが(金の無心以外にも)、それが何かは観客視点では分からない。おそらくは終盤にかけて盛り上がりがあるような、気がするだけ。残念ながら、システムの都合上淘汰されても仕方ない作品だった。
 しかしながら僕個人の意見では、だからこそ続きを観なきゃいけない気がした。タイトル回収もどうやって行うのかさっぱりだ。気になって仕方ない、だからこれに3票を投じた。公式Twitterの様子ではだいぶ水をあけられた様子だ。まあ予想通りだったんだけど。

『ギャル』(上演予定時期:2018年初冬上演予定)
 高校三年生、ギャルたちは悩んでいた。恋に、進路に、世界の平和に。
 夏の始まり、補習に集まったギャルたちは、最後の夏休みの過ごし方について話し合う。
「いつまでも、ギャルでいられるわけじゃないから、」
 遠吠えの通常営業、オール女子でお送りするギャル達の議論劇。
出演者:苺田みるく先生(らぶ・まん)、さんなぎ、田中渚(日本のラジオ)、永田佑衣

 最多得票数を獲得したのはこの作品だった。
 わかる。観たときにこれが一番票集めるなと確信した。しかしテーマに反していると思った。なので僕はこの作品を投票候補から一番に外した。
 テーマは勿論、どの作品の続きが観たいか、だ。
 この作品の肝は、華やかさとキャッチーさにある。女子高生が4人、うち1人はド派手なメイクのヤマンバギャル。うち1人はいまどきな正統派ギャル。うち1人は真っ赤な髪のバンギャ。うち1人はギャルとも言えないパンピーパンピーバンギャがとあるアーティストのライブに行こうとしてるんだけど、パンピーは進路希望の用紙に何も書けなくて、残りの2人のギャルはなんだかずっと揉めていて。
 脚本演出ともに良かったし、演技も素晴らしかった。だけど悲しいかな、この後の展開に全く興味がわかない。全くは言い過ぎだけど、自分で考えてみてもどういう展開にすれば面白くなるのか予想がつかない。きっと面白くはなるんだろうけど、やはりそれだとテーマから外れてしまう。
 ぶっちゃけた話、今回の投票システムの不安とは、単なる人気投票、ひいては推し役者への忖度投票になりはしないか、と言う点でした。
 けっしてその通りだったとは言わないけれど、システムを理解して投票した人が本当はどれだけ居るのか。木村氏もただノリと勢いで作ったんじゃないか、という気さえした。

『猫の呪い』(上演予定時期:2019年夏)
 ある日、ある街に住む、ある男に、猫がのりうつった。
 男の恋人である女はパニック。何故、どうして、何があったらこうなるのか。女は悩んだ。悩んだ結果、友人の女(職業:トリマー)に男をみてもらうことに。
 遠吠え渾身のシュールホラー。
出演者:梢栄(劇26.25団)、佑木つぐみ(火遊び)
日替わり彼氏
13日(金)20時、16日(月)17時:竹内蓮(劇団スポーツ)
14日(土)20時、16日(月)13時:二宮清隆(劇団天然ポリエステル)
14日(土)15時:フジタタイセイ(劇団肋骨蜜柑同好会)
15日(日)13時、16時30分、20時:山田健太郎(やまだのむら)

 シュルレエル、と一言で表現するのも憚れる、とても不気味で不思議だがあくまで日常の延長線上にありえそうな作品。男の恋人の真剣な表情と声、友人の女の戸惑う表情と声、ずっとそこらへんで猫っぽい素振りをしている男、の3人が舞台上にありただ淡々と会話が進んでいく。恋人は思い詰めたように話すし、友人は結局訝しんでるし、男は自由気まま。笑える要素が多いのだが、単に笑えはしないような不気味な空間が出来ていた。
 最後の展開、男が生玉ねぎ入りのサンドイッチを誤食し、苦しみもだえ、友人がビニル袋を取ってくるように言い、女がそれに従った。その間に友人が「もう、演技しなくて良いのよ」と男に問いかけるが、ついぞ男はぐったり動かなくなってしまう。あれ? 演技じゃないの? と言いたげな友人の頭に、恋人がビニル袋を被せて、暗転。
 ぱっと、ラーメンズの傑作「採集」を思い出した。とは言え、あちらは展開が予想できるし、こちらは展開の予想がつかない。一応個人的な定義として、ああいう演劇は無駄に場面転換を必要としないものだと思うので、またあのリビングひいては居住空間内で完結させるのだろうかと思う。その場合、つまり友人を監禁する描写……しかし男は絶命(気絶?)してしまったぞ? 恋人の行動の真意は? 話中に出てきた七不思議との実際の関連は? などなど疑問、考察の尽きない作品だった。しかし、今挙げた疑問考察部分はわりとどうでも良く、この作品は15分で完結しても良い、と考える。伏線、と言うよりかはシュルレエルを演出するための装置みたいなものだったんじゃないかな。公式がシュールホラーと明言してるのだし、深い意味を問うても無駄なのではないか、という理由でこれに投票するつもりも皆無でした。

『朝子さんと夕子さん』(上演予定時期:2018年初冬)
 朝子さんと夕子さんは二人きりの姉妹。あまり似ていない姉妹。中途半端に歳の離れた姉妹。
 久々に会った姉と妹は、ほんのちょっぴり互いの秘密を暴露し合う。墓場には手ぶらで行きたい女二人の会話劇。
出演者:佐藤すみ花(劇団背傅館)、二ツ森恵美(時々、かたつむり)

 とても不思議な作品だった。何を伝えたいのか、何を以て観ていれば良いのかわからない、でも観ていてじんわりと温かな気持ちや悲しい気持ちが入り込んでくる不思議な作品。
 2人の会話劇でありながら、途中に挟み込まれる互いにしか知り得ないモノローグ。一見すれば穏やかで理知的な姉と、過激で暴力的な妹。でも独白部分を介すると、ただ臆病で妹なしでは積極的に動けないだけの姉と、姉を大切に思うからこそ危険を顧みることなく冷静に行動する妹、という印象に変わる。乙一の作品、というイメージがついた。何処がと言われれば答えに窮します。
 アイスを勝手に食べた姉を唆し、夜中にこっそり二階の窓から家を出て、遠くのファミリーマートまで出掛ける、というシーンで物語は終わるのだが、その際の妹のモノローグが意味深だった。
 実は家の中には両親が居ないこと。玄関を開けると知らない人たちが待ち受けていること。それは悪い人たちだということ。未来を知っている自分だから、未来を変えられること。でも自分の死だけは変えられないこと。
 この姉妹の会話劇こそ僕が観たかった一つの演目で、考察欲が掻き立てられるものだった。正直に言えば、投票は迷った。こちらに1票、あちらに2票か、それともその逆か。好みで言うなら全演目を通して、これに決まりだったのだが、ルール上、自分の好みを推すのが正解だとも思えない。単純に好きな演目に投票してくださいと言われたら迷わなかったかもしれない。

 というわけで以上四つの演目への感想終わり。
 総評として、結果に不満はあるがやるならやるで観に行こうかなという気持ち。