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さよなら、ギャシュリークラム

遺書を書かされています

「刹那さロジック」

 久しぶりに早い時間に帰ってこれたというのに部屋に彼女の姿はなかった。
 何処かに出かけると言う話は聞いていない。いや、連絡は来ていたか? 確認する。やっぱりない。ほぼ彼女とのやり取りしかない携帯電話だ。着信があれば否が応でも気付く。
 食事の用意は、されていないか。と、テーブルの中央に書き置きらしきものを見付けた。
 愛想付かされて出て行ったのか? ため息をつきながらそのA4サイズのノート用紙を拾い上げると、それは謎めいた文面で彩られている。
「やれやれ、暗号文か……」
 イタズラ好きな彼女を思いながら、僕は再び大きなため息をつく。腹も空いているというのに、どうやらこれを解かないとどうにもならなそうだ。何処かに隠れてるのかな? だが、このところ残業続きと休日出勤の繰り返しで起きている彼女に会うことも殆ど無かったし、これくらいは付き合ってあげないと罰当たりかもな。それに実はこういうたぐいのゲームは昔から得意だったりするんだ。
「さて、じゃあちゃっちゃと解読しますか」
 意気揚々と暗号に向かい、わずか数分後に浮かび上がった解答。

 

 「探さないでください
 さようなら
 もういい加減疲れました
 君にも この世界にも」

 

 空気中に放たれた言葉は虚しく舞った。
 どうやら、解法を間違えたんだろう。
 何度も何度もその暗号文に挑戦した。
 彼女の家や、思い出の場所を探したほうがずっといいはずだった。
 それを知っていたのに。
 僕は君が作った暗号を解き続けたんだ。
 きっと正解はもう出ていたんだろうけど。
 きっと正解はもう出ていたんだろうけど。