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さよなら、ギャシュリークラム

遺書を書かされています

「理想は時間の流れに溺死する」

「最後まで聴いて初めて、タイトルの意味と歌詞の深さが理解できる曲なんだよ!」
 そう彼が得意気に言うから、彼女と大人しくその曲を聴いていた。
 彼はニヤニヤと、ファン以外には苦痛を与えるだけの時間を、ただ強制する行為に気付かないでいる。退屈な退屈な3分50秒後。彼女は、最後のサビを迎えた瞬間に眠ってしまった。
 その行為に対する彼の怒りは、翌朝まで続いた。

 もし、僕の寿命が今日までなら、君が考えてずっと温めてきたらしい物語のラストシーンを聞かせてもらえるのだろうか。
 出し惜しみして、出し渋って、僕が息絶えるまで「ギリギリまで自分で考えてみて」って言うのだろうか。
 結局あの曲のタイトルの意味は理解できたが、歌詞の深さなどさっぱり分からなかった。そう、正直に言うと、彼の怒りは失望に変わってしまったようだが、僕の時間だって無駄になったのだ。
 きっと面白いって言ってくれるはずだ! なんて不確かな希望的観測を持つのはやめろ。意味ありげな言葉で他人を惹こうとするのはやめろ。なぜ、多数が君らに興味を持たないことを分かった上で無視するんだ。なぜ、理解できない彼奴等が悪いんだって結論を出してしまうんだ。
 お願いだから聞いてくれ。僕らには時間がないんだ。