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さよなら、ギャシュリークラム

遺書を書かされています

『負け犬はそも、闘わない』

圧倒的な勝利より僅差での逆転劇に憧れるのは、他を寄せ付けないほどの懐疑的な意見を挟み込む余地がないほどの圧倒的な結末に酔い痴れる自分の姿が想像できないからだ。対して、僅かのところで最終的に勝利を収めたいなんて考えは相当に妥協していると言え…

『いのちを賭けて遊んでいる』

生命線がある一点から途切れて見えなくなってしまってからもう1か月にもなるというのに僕に襲いかかるのはいまだに慣れぬ生活と明日生きていくために必要な路銀を賭博行為によって浪費してしまったが故の罪悪感と後悔と憂鬱だけであり、いっそのこともうそ…

『Gの収束点』

徹夜明けのまだ空に暗みがかかってる頃、僕は欠伸を繰り返しながらも国道に車を走らせる。夕方から夜にかけて、世界が黒くなっていく瞬間より、夜と朝の狭間に包まれる時間帯の方が、意識がぼやけがちだななんて思う。単にライトを消すタイミングを決め兼ね…

『呼吸は足りない』

白い息が寒空に掻き消えていく。擦り合わせた手は乾燥した空気のせいか、果たして積もり積もった年月のせいかガサついている。悴んだ手が何かを掴めるとは思わない。君の手を握ってしまえば冷たさに思わず離してしまうだろう。意識的に息を吐きだしてみる。…

『やがて陽は落ちるという』

持て余した時間をショッピングモールの駐車場で過ごさねばと、リクライニングのシートを倒し窓の外に広がるどんよりとした空を眺めて居る。視界の二割ほどを阻害する冬を眼前に迎えた桜の枝が身体の中を縦横無尽に形成する血管にも見える。枝先に位置するい…

『詰まり詰まらない』

読みかけの漫画を捨てるような勇気があれば、ためらうことなくそのボタンを押すことだろう。と君は言う。 上手くもなんともない、要領すら得ない、そもそも何に対してかも分からない言葉を受けて、僕は訝しげに羨望する。 ああ、羨ましいなと思ったのだ。馬…

『理想ではない死にかた』

ミスチルを聴きながらこの文章を打っている。約束の作品はまだ出来ていない。ブログを更新する暇があるなら自分と向き合うことにリソースを割いたほうが良いんじゃないかと心の声がする。気がする。気はしてるんだが、残念ながら桜井の声が全てを掻っ攫って…

「中」

午後二時。駅裏にある喫茶店に一人の男がいる。 男の名前は沢渡健吾。ゴシップ系週刊誌の編集者を務めている、それなりに勤勉な男だ。ただ最近ではインターネットやフリーペーパーなどの存在により、発刊部数も激減。元々、沢渡が勤める出版社は大手と言われ…

「卒業」

壇上から見下ろした視界に、三百人余りの全校生徒が写っている。僕は目の前に置かれたマイクの位置を調節すると、視点を一方向に定めぬまま喋り始めた。「僕は、この学校が嫌いで仕方ありませんでした」 誰も何も言わない。「上辺だけの付き合いを求めていた…

「まっさらな紙に不安と疑心を落とす」

『何気ない日常を切り取った写真を投稿するだけのブログです』 そんな文字列を眺めながらため息をつく。そんな何気ない日常に常に映り込む、創作された野暮ったい表情を露わにする女は一体なんなんだ。贋作まがいのフィクションに僕は苛立って、気付けばパソ…

「サイレンと似た静寂」

遠くから救急車のサイレンが聞こえる。アパートの立地は国道に近く、更に一キロ圏内に総合病院がある。毎日毎晩、とは言わないが、引っ越しをしてから都合三桁はあのけたたましい音を耳にしている。甲斐あってか今や多少の騒音の中でも眠れるようになってし…

「布」

所用も所用、取るに足らぬ用事を済ませてモノレールに乗り込んだ。蕁麻疹、とまではいかないが、足を踏み入れた瞬間に身体中が痒くなる。慣れない状況、ストレスで胃も痛い。文字通り地に足をつけていない状態だ。せめて意識だけはしっかり保っておかなくて…

「夜闇に蠢き」

月明かりも差さないコンビニの隅に、黒い影がある。いや、黒ずくめの人間が立っていた。夜食のおでんを買い終えたばかりの僕の目は、これ以上ないほど典型的な不審者像を結んでいる。見れば見るほど黒くて黒々しい人間だ。怪しい以外の表現が存在してはなら…

「おかえりハーネス」

「一生一度あるかどうか分からない貴重な体験だよ!」と煽るだけ煽ってみたら難なく快諾してくれた。 あの時の会話を思い出しながら、今目の前に吊るされた君を見ている。だらしなく開け放たれた口元からこぼれ出す液体が、部屋の照明を以って輝き出す。僕は…

「潰れた僕のイノセント」

愕然としながら日付を再度確認する。もしかしたら昨日は彼女の誕生日だったのではないか? いや、間違いない。絶対そうだ。やばい。仕事が忙しく、現に帰宅時間が日付を跨いでしまっているとはいえ、それは言い訳にもならない。プレゼントどころかメールの一…

「刹那さロジック」

久しぶりに早い時間に帰ってこれたというのに部屋に彼女の姿はなかった。 何処かに出かけると言う話は聞いていない。いや、連絡は来ていたか? 確認する。やっぱりない。ほぼ彼女とのやり取りしかない携帯電話だ。着信があれば否が応でも気付く。 食事の用意…

「観測者としてのベルカ」

吹き零れたガソリンを眺めながら、人の気配の薄れたテーマパークを懐う。 私にとってそれはどうにか出来るわけもない事象であると知りながら、傲慢にも世界の立役者のふりをするのだ。 弱々しく口を開いて呪うと言い、目に見えたものを殴り殺す、精神性にお…

「考察する肢体」

旧四号線上、カラスが轢かれた何かの屍体に群がっていた。 パッシングを繰り返すもふてぶてしい様子で彼奴等は避けようともしない。 人間如きの運転する鉄の塊が、まさかそのまま突っ込んでいくことは有り得ないと思っているのだろう。 とりわけ、カラスはと…

「不完全犯罪」

山荘には脱出ゲームの参加者が10人ほどいた。 そのうちの1人が周りに聞こえないような声で呟いた。 「木を隠すなら森の中。水を隠すなら湖の中。死体は隠せない、だが人を殺したという事実を隠すなら」 翌朝の山荘から、参加者が1人だけ出てきた。下唇を…

「理想は時間の流れに溺死する」

「最後まで聴いて初めて、タイトルの意味と歌詞の深さが理解できる曲なんだよ!」 そう彼が得意気に言うから、彼女と大人しくその曲を聴いていた。 彼はニヤニヤと、ファン以外には苦痛を与えるだけの時間を、ただ強制する行為に気付かないでいる。退屈な退…

「夏の水槽に腐った魚」

「誰も教えてくれなかったんです」矢継ぎ早に浴びせかけられた詰問に対して、僕はそう答えた。「なら最初から誰かに教えてもらえ。受け身の姿勢でいるなよ」勝ち誇ったような僕の嫌いな顔で、そいつは鼻を鳴らした。 僕は既に"こと"が始まり済んでいたことす…

「排気汚染にシンパシー」

「ついてないなあ」 助手席の彼女が溜息混じりに呟く。薄くスモークの貼られた窓の向こうで本降りになってしまった雨空を見上げ、もう一度溜息をこぼす。 そのとおりだ。実についてない。 郊外にある、全国紅葉名所百選にも選出された大イチョウの木。正直、…